Coffee brake

ゆるりと気ままに呟きます。

恋とアイドルとゆとり ①

「いやー、僕にはわからないね!」

将来同業者となる予定の方々との飲み会で、おじさんは言った。彼が話題にしたのは【現代の若者の恋愛離れ】。アイドルがいい二次元がいい、生身の人間はいらない、というような意見をワイドショーか新聞のコラムか何かで目にしたのだろう。で、ちょうどいい「若者」のわたしが目の前にいたので、こんな流れになった次第だ。


「んー、二次元の方がいい、とまではわたしもいかないですけど」


でも、好きなバンドなら、いる。

わたしは嫌なことがあったとき、アホみたいに彼らのライブDVDを見る。音楽に浸り彼らに没頭する。簡単に言えば逃避だ。

アーティストとしてステージに立つ彼らの存在は綺麗で絶対的で、観客のわたしたちみんなに歌やMCで笑顔を届ける。どんなにこちらがへこんでいようが彼らは嫌な顔一つせず、「みんな最高だよ!」なんて言うわけだ。世界が違う彼らとは接点が多くないため、裏切られたりなんてことはまずない。

おそらく二次元に走る彼らもその「絶対的に自分を肯定してくれる存在」に惹かれているのでは、とわたしは言った。


「でも、恋愛に興味がないとか、そういうアイドルやアニメに傾倒しすぎるのって、どうなの?」


納得がいかないらしい。恋愛なぁ。

おじさんは画面の向こうのキャラクターに、触れ合うことさえできない相手に傾倒することが理解できないのだ。今は様々なメディアが発達し、アニメが元でも実際にアイドル声優がキャラになりきって本物のライブをしたりという、実質2.5次元も存在しているから、ちょっとややこしいことになっている。画面から出てこなかった「はず」のキャラクターが目の前で歌い踊る。3Dグラフィックでライブをする初音ミクもその種だろうか。

興味がないっていうのは「今は恋愛に時間を割かなくてもいい」ってことの言葉のあやで、決してまったく不必要である!ってわけでもないと思うのだけど。アイドル、憧れ、うーん……。


「あっ。」と、ひとつ思いついた。


わたしには初恋の相手がいて、ちょっと恥ずかしい話だけどつい最近まで引きずっていた節がある。それはどうしてか。好きなのに思いも伝えず、付き合えずに終わってしまったから。未練たらたらだったからだ。
付き合えずに終わってしまった恋の思い出は、綺麗なままで保管される。実際に接したりしていたら見えてくるであろう、「粗」のような部分を知らない。だからいつまでも憧れ続けたのだ。

加えて初恋のときめき補正、長年の思い出補正で美化されまくっていることもある。結果、相手は実質自分の中のアイドル、もはや神格化された存在となるのだ。人からとやかく言われようが、「あんなに素敵な人なのだから」と脳内で自動修正されたりと、だいぶ妄想の域に入ってしまっている部分はあろうものの、これは誰かを好きになった経験がある人ならおそらくみんな同じだろう(と信じている)。だから人は昔の恋を引きずる。
思い出話やふと前のことを思い出した後に聴くと確実に頭を抱え込む、「KissHug」やら「えりあし」などという曲をこの世に送り込んだaikoさんはまじギルティである。


実際問題、同窓会で恋愛に発展するのはかつて好きになった人ではない人ととが多いらしい。理由はやはり、好きになった相手は美化しすぎてしまい、会う時のハードルが上がってしまっているから、とのこと。


つづく。