Coffee brake

ゆるりと気ままに呟きます。

カーストとステータス

イケてない芸人。
某バラエティでの「くくり」だ。

最近の言葉でいえばスクールカーストの下位層、といったところか。今でこそ芸人さんたちは笑って話しているけれど、なかなかに残酷なものだよなぁと思う。



わたしが中高生だった当時も学校で過ごしてきた中で、なんとなく「あの辺のグループは力がある」っていうのはあったしわかっていたけど、あくまで暗黙の了解、みたいな感じだった。

けど。

塾講師をしているとき、中学生たちの会話で「うちらはA軍じゃないからできないよね」という発言が聞こえてきて驚いた。日常会話でもそんな単語が出てくるのか。どう考えても生きづらそう……。人間関係に波風を立てない、空気を読む、なんてことも大人社会ほどないだろうし、今の子って相当苦労してるんだろうな。



ルックス、発言力、ノリ、性体験の多さ。この辺が中高生のピラミッド形成で重視される要素なんでないかなと思う。

今日も今日とてやる気が起こらず、卒論もはかどらなかったわたしはネットを回遊していた。数年前の映画が無料配信されているらしい。「ほー、あの可愛いモデルさんが主演か。ほう。」くらいの感覚でクリック。タイトルからなんとなく察してはいたけど、前には流行ったケータイ小説を原作とした映画らしい。

特にその作品について知識はなかったけど、何かと急展開だし微妙につじつまが合ってないし、出るトピックなどからも想像がついた。演技とかストーリー云々、というよりは主演の女優男優で目の保養、みたいな感じでぼーっと眺めていて、気づいたら一本見終わってしまった。

どうして暇じゃないときほどこのような時間が増えてしまうのだろう。首が絞まる音。背中の方に水の気配。



それはさておき。



ケータイ小説に描かれているのは大抵カースト上位層の女の子。ちょっとやんちゃで、ちょっと経験豊富で、ちょっと闇を抱えている。で、運命的な出会いがあって、「本当の恋」とか「愛」を知るのが大方の流れではあるまいか。

ブームが巻き起こった当時絶賛ティーンエイジャーだったし、実際そんな小説も何冊かは流れに乗って読んだ。今思うに、小説家でもない一般人が、しかも「同年代の中高生」が「リアル」に綴る文章、ということで話題性は一気に膨れたのだと思う。しかも恋愛に興味を持ってくるお年頃。カースト上位の「ちょっと過激」な話は当然、気になるものだった。


「あなたと出会ってほんとの恋を知ったの!」
「愛してる……(ギュッ)。」


……というのを、今になって見るとおうおう、って感じなのだけど。その「ほんとの恋」を発見するまでには、絶対条件なんだろうかと思うくらい命に関わる病や事故などのトラブルが入るのが、この頃のケータイ小説の特徴だ。実際、失って気づくものはたくさんあるけど……


ん、ちょっと待てよ。


「ほんとの恋を知ったの!」と言ってるのは、物語の主人公。つまりカースト上位の子たちだ。それなりに恋愛経験とかもある、そういう層の子たちのはずだ。

ということは。
それまでの、カースト形成に至るような、付き合っただー別れただー言うようなあれらの経験は「ほんとの恋愛」じゃなかった、って言ってるのと同じだよね。たぶん意識してないだろうけど。

あの年代で言う彼氏彼女は、大抵「RPGでちょっとレアアイテムゲットしたわ」、「えぇすげーじゃんいいなー」くらいのものだと思う。もちろん気持ちが付随してる人もいるだろうけど、ある種のステータス、みたいな感じ。あるとちょっと強い、みたいな。

それを心のどこかで自覚してるから、作者の少女たちは「ほんとの恋愛」みたいなものに憧れて、物語を書いていたんではなかろうか。願望の投影、というべきか。



そんな考えに思い至って、物語の稚拙な部分とかも相まって、なーんだやっぱ中高生って可愛いもんだなおいおい、とにまにました。ともあれ、ちょっと年をとった世代からしたらこんな風に余裕を持ってみられるのだけど、現役の子たちからしたら大問題には変わりないのだろう。地位や名声、経済力が絡んでくる大人のカーストも面倒だけど。

とかく人の世は……。
卒論やろ。



追記:愛とは!みたいなタイトルが多くなりがちだったのは、卒論テーマが反映されているせいだと思われます。生を全うしたところで必ずしも答えが出るものではないような気もするけど。考えすぎても哲学者になっちゃう。