Coffee brake

ゆるりと気ままに呟きます。

傍聴マニア15 ①

「じゃあ12時半霞ヶ関で!」


街中がクリスマスに染まる中、友人とそんな約束を交わした。目指すは東京地裁

向井理のドラマや「それボク」を見てから、裁判傍聴への興味は増していた。普通に生活をしていたら、なかなか立ち入ることのない「はず」の場所。表現は悪いかもしれないけど、そこに立つ人は人生の何らかの分岐点にいる。



傍聴に行かないか、と話を持ちかけてきたのは、前回春画展に同行した、少々ぶっ飛んでいる例の友人だ。

霞ヶ関のA1出口を出てすぐ。
ビル群の中に裁判所がそびえ立つ。

社会の教科書でよく見た外装。付近に修学旅行生と思しき集団がわらわら。そんな中、とりあえず写真をぱしゃり。ちなみに建物内は全面撮影禁止だ。



空港のようなゲートを通り、刀剣類がないか荷物検査をされて中に入る。この時点でやや興奮気味。

当日の裁判一覧は正面の机に置いてある。地裁の民事刑事、高裁の民事刑事に分けてファイリングされているようだ。1日にこれほどの裁判があるとは知らなかった。



「あ、これ面白そう」

「あー、それは審理かぁ」

「それだとだめなの?」

「ある程度話の確認が終わってしまってるから、ドラマを第3話から見てるような感じになるんよ。それでも良いなら行く?」

「なるほど…。最初から見るとしたら新件、ってことなのね。」



へぇ、判決は10分くらいしか時間とらないんだね、などと話しながらめぼしいものをメモ。のち学食のような雰囲気の食堂でランチ。

スーツの人は弁護士だろうか、それほど人は多くない。私服は当事者か、はたまた傍聴マニアか。満腹になったところで、法廷へ向かう。全18階の庁舎をエレベーターで移動。どきどき。



「では、若干時刻は早いですが、開廷してもよろしいですか?」

黒い法服を纏った裁判官の合図で裁判は始まる。よく見るあの黒い布は制服であり、役によって刺繍は異なるらしい。

一番上の段には裁判官、そのすぐ下の段にも弁護士がひとり。傍聴席と同じ高さのフロア、右側に検事、左側に弁護人。おそらく、ずっとうなだれているのが被告人。正面には証言台がある。被告人以外は大量の書類をぺらぺらとめくっている。その様子を、柵の向こうから見守る傍聴マニアたち。人はそれほど少なくない。



この案件は児童ポルノの審理。
審理はあらかた話の確認が終わってから、足りない部分の資料の補強や、判決まで必要な手続きの確認をするような形だ。

本当は新件の方が「何をしたのか」がわかるので面白いらしいが、時間の都合で覗いて見ることにした。ちなみに入退室は自由、メモも自由。ただ録音撮影は厳禁。


まずは書類内容を検察官に確認、そして内容報告、資料を提出。静かな空間はドラマを見ているかのようで、異様な雰囲気が漂っている。


「以上のことから、精神鑑定の要求については、必要性を認めないため却下します。」


精神鑑定。テレビでよく聞く言葉だ。
頻繁に行われているイメージではあるが、やはり無闇に受けさせるものではないらしい。被告人はぴくりとも動かない。鑑定の必要がないということは、「普通の人が魔が差して罪を犯した」ということだ。

「普通」って、一体なんなのだろう。


その他、恐らく執行猶予や更正の際にお世話になるらしい施設の話がなされ、次回の日にちを決め、終了。裁判官も弁護人も検事も、本当に淡々とした口調で審理は終わった。

裁判、と聞くと長々と弁論が繰り広げられるイメージだったのだが、案外時間は割かないようだ。案件の多さから考えたら無理もないだろうが。

退出の時は検事や被告人も廊下で一緒になる。被告人は「どこにでもいそうな人」という印象でしかなかった。



「これが裁判なんやな…」

「イメージと同じすぎて、すごい」



わたしたちはとにかく雰囲気に圧倒されていた。ここであらかた裁判のスタイルを学んだ気がするので、次の法廷へ向かう。階や部屋の違いで、同時進行でみな行われているため、終わったら次々と傍聴に向かうことができる。



次は「迷惑行為」の新件だ。